基調講演

(敬称略)

脳機能画像から見た精神療法の可能性

脳機能画像とは、生きている脳内の各部の生理学的な活性(機能)を様々な方法で測定し、それを画像化したものである。脳で行われる様々な精神活動について、脳内の各部位がどのような機能を担っているのかを探り、また、正常の状態と比べることで、精神神経疾患をはじめとする脳の病気の研究にも役立てることができる。

 

脳の構造を画像化することは、比較的古くから行われていたが、機能的な状態を画像化する試みは1980年代になって行われるようになった。代表的な方法として、機能的磁気共鳴画像法 (fMRI)や、ポジトロン断層法 (PET)などがある。


脳機能画像の使用により精神疾患の病態理解が進むとともに、さまざまな治療に関する研究が行われるようになっている。こうした研究の対象には、うつ病、強迫性障害、パニックディスオーダー、境界性人格障害、PTSDなどが含まれ、用いられた治療法としては、薬物療法の他に行動療法、認知行動療法、対人関係療法などがある。演者が専門とする禁煙およびその他依存症治療においても、このような研究の適用が待たれるところである。

 

今回はこれらの研究を概説するとともに薬物療法と精神療法との違いや、精神療法の可能性について論じたい。

<講師>

予防医療研究所代表/名古屋大学医学部非常勤講師

磯村 毅

 

<略歴>
1989年 名古屋大学医学部部卒業、放射線医学教室入局
1994年 テキサス大学医学部研究員
1996年 名鉄病院呼吸器科医師・禁煙外来担当
2006年 予防医療研究所代表

 

<所属学会>
日本呼吸器学会認定専門医、禁煙心理学研究会世話人、日本医師会認定産業医、動機づけ面接トレーナー

 

<主な著書>
「リセット禁煙のすすめ」(東京六法出版)

「二重洗脳-依存症の謎を解く」(東洋経済新報社)

「図解でわかる依存症のカラクリ」(秀和システム)